「EU消滅」を読んだ

Naoji Taniguchi
Jan 28, 2021

去年の年末にフランスにイスラム政権が誕生するというフィクションのミシェル・ウェルベックの「服従」、ナチスのナンバー3、金髪の野獣と呼ばれたラインハルト・ハイドリヒの暗殺計画を描いた「HhHH」、さらには数冊読んだ地政学の本なんかがあり、手に取ってみた本。

著者の浜矩子さんは髪が紫の女性という事を知ってる程度で、彼女の専門、文章を始めて読んだ。

この本の構成は、3/4ぐらいがEUの成り立ちで、一言で言うとEUの成立は「必然の奇跡」みたいな感じ。元々は戦争ばっかりやっててしんどいし、なんとかしましょ、という政治的な目的でヨーロッパをまとめましょう、という方向で、もともと戦争やってたぐらいだからやっぱり政治的にはまとまらなくて、経済でまとめようというのがEU。

しかし、統一通貨導入という事は、自分の国の通貨の発行をしないという事で、国として通貨をコントロールができなくなるという事態が起こるので、国としては避けたいということで基本的にはやりたくないのだが、それを上回るやらなければいけない理由が、東西ドイツの統一だった。ドイツが統一されてあまりにも強くなって実質ヨーロッパの通貨がドイツマルクになってしまうのよりも、ユーロという統一通貨の方がマシという仕方がない理由でユーロ導入に踏み切ったといういきさつ。

EUの成り立ちの中でさまざまな構造的な問題が含まれている。例えばギリシャは地政学的に中東にも近いので、早めにEUに組み込んでおきたいという事でEUに組み込まれたがギリシャ経済はEUの中心である原加盟国6っか国とはかなり経済的には格差があるが、ギリシャもEUに組み込んじゃった方が中東方面に取り込まれるよりも良いという事で早目にEU入りした。

同じ理屈でロシアとの境目の中欧の国々も後からロシアにまた攻め入られるよりも、EUに参加した方がマシという事でEUに参加したが、ギリシャがEUに入った時のEU参加条件よりも、参加条件が厳しくなんとかそれをクリアして参加したという事でギリシャに対しての不満があったりもする。さらにはギリシャが経済破綻してEUでサポートという局面でも新たに参加した中欧の国の方が経済的には厳しかったりして、なぜ自分がギリシャが救わなければいけないのか..って話になっていたりもする。

後はイギリスの話。この本が書かれたのは2015年なので、ブリグジットは決まっていない時だが、EU消滅の一つのシナリオとして、ブリグジットはすでに挙げられている。

自分の持っていたイギリスのイメージは、伝統と格式を重んじる国というイメージだったが、この本によるとイギリスのルーツは海賊で、略奪もビジネスという輩国家だった。大英博物館に行った事があるけど、これも世界中からイギリスが略奪してきたものを展示してある所で、言われてみると確かにそうかなという感じ。そしてイギリスは国としては良い言い方をするとアジャイルで(というかあまり計画しないで)実利的だそうだ。

フランスはというと、計画よりも感性を重んじるようなイメージを持っていたが国としては逆でみっちり計画を立てるそうだ。

そして、海賊をベースとしているイギリスと、宮廷文化をベースとするフランスは根本的な所で相いれない。というイギリスだけど、それなりに国力があって、フランスとドイツとのクッションというポジションとしてはEUでは重宝されている。

ドイツは経済的にはEU内で最強なんだけど、ナチスがひどい事しちゃったんで割と控えめに目立たないようにしていたが、時間も経ちジワジワともの言う国になってきている。さらにクッション役のイギリスがEU脱退。という事でEU消滅というシナリオは進行しつつある。

という事でEUが消滅するとすると、それは何年後なのか、EUが消滅するとどうなるのか?

そういう所も書いて欲しかったが、専門家としてその辺を書いてしまうと大抵予測を裏切る事が起こり予測は外れてしまうので数年後に「浜さん外れましたね」みたいな事を言われないように敢えて書いていないのかな?タイトルが「EU消滅」と引きが強いので、EU消滅後の予想が書いてあるのかと期待してしまった。

今までの流れでEUが消滅したとすると、ロシア、中国がEUに属している中欧の国を取り込みにかかり、ドイツを中心とする連合がタイトな感じで出来てくるのかなと思った。その中でキャラの立っているエストニアとかフィンランドとかはシンガポールっぽい感じで他の世界とヨーロッパのハブでやっていく路線で国際化をしてヨーロッパとアジアとイスラムのミックスみたいな感じになっていくのかもと思った。

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Naoji Taniguchi

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