「HHhH プラハ 1942年」を読んだ

2021年最初の本。これも本屋大賞の本。最初から凄い本だった。ナチスのラインハルト・ハイドリヒというホローコスト計画を立案をしてプラハの監督をしていた人物の暗殺という歴史をベースに、小説家が小説を書くという行為をメタな視点で眺めつつ、ナチスの資料やら、映画やら、小説の断片を紹介しつつも、ラインハルト・ハイドリヒの暗殺の場面では、作家自身が資料に入り込んで、そこの場面を見ていいるかのような描写に至る。そこの入り込み具合が全く他の小説に無い新しい感覚だった。

例えて言うなら2019年のM1グランプリでミルクボーイのネタを始めて見たような感じ。

後半の盛り上がりは凄いんだけど、前半は高校時代は「山羊」と呼ばれたラインハルト・ハイドリヒがナチスで「金髪の野獣」と恐れられるような人物になったのかをいろんな断片と自分の思う所がカットアップされる感じで書かれていて、ヒムラーを始めとしていろいろと出てくるナチスの構成員については説明が無く出てくるので、いろいろとググりながら読む必要があり、これは最後まで読めるかなともちょっと心配をした。

そして、立て続けにナチスの人物のWikipediaのページを読んでいたので、その時の自分の検索履歴を見られたらヤバい人だと思われても仕方がない感じになってしまった。

さらにその当時のドイツやロシアの間の中欧の国が舞台になっていたので、そこもググる事からスタート。地理で学んだチェコスロバキアがとっくの昔にチェコとスロバキアに分離してたり、ルーマニアとウクライナに挟まれてモルドバという国があったり、さらにはベルギー、オランダ、ポーランドとかについても調べたりと、ヨーロッパの地理を調べながらの読書となった。

ロシアとドイツの中欧や東欧の国はロシアと西ヨーロッパの緩衝地帯として面で接してるとか、ドイツはランドパワーの国で海側に向かうなんかの以前に読んだ地政学の話も頭に浮かべながら読んでいた。

ドイツはランドパワーだったよなと確認の為ググったらやたらと地政学についてまとめられたページを発見した。このWikiwandってなんだろう?

最近読んだ「ひとつむぎの手」「楽園のカンヴァス」がストーリー展開としては王道の複数のプレイヤーのストーリーが交錯をして伏線を回収するというスタイルだったが、HHhHはそういった王道のスタイルとは全く違ってて、歴史上の事実をベースにしているので伏線というのは無し、結末も事実をベースにしているので、もうわかっている。それを作者がどう書くか?そういった期待をベースに文章のグルーブ感でぐいぐい後半読ませる、新しいスタイル、フォーマットの文学だった。

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Naoji Taniguchi

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